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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

Dopamine

2010.11.13

先月半年ぶりに韓国に出張しました。
出張の数日前のある日の午後の事でした。
お客様訪問の後、帰社途中でネクタイを買い求めました。
素材はニットでとても細く、色は美しい黄色です。
とても発色のよい黄色で、且つ細かな刺繍がとても綺麗でした。
ネクタイの色や形は自分の中にだけ流行があるようで、一般的な流行と非同期で感ずるようです。なので、自分の好みでしか行動しません。勿論時たま頂く事もありますが、残念なことに一生箱の中か、または勝手に甥っ子が持ち帰ったりもします。

後日、衝動的に鮮やかな黄色のネクタイを購入したことを、子供のころからとても強いスピリチュアルを持っている知人に話したら「とてもいいことです。」と思わぬ反応を示しました。
私と黄色いネクタイの相性は現在のところいい様です。

時折、街の中をお客様訪問の行き帰りで好きなものに出会います。その時、その瞬間に、きっと私の脳はドーパミンが多量に放出しているのでしょう。
なぜって、気持ちいいからです。
人は美しい音楽や美味しい食べ物、好きな異性に出会ったとき、さらに人間自身が本来持つ本能的な喜びを感じた時、またはある行動をとって周囲に認められたり褒められたりした時に、脳内に神経伝達物質が放出されるそうです。
この物質と云うのが「ドーパミン」だと、脳科学者の茂木健一郎は説明しています。
特に人間の脳が一番喜びを感じるのは、他人とのコミュニケーションだと彼は断定しています。
その中でも、特に目と目とが合うことが「」はとても喜ぶらしいです。そう云えば。。。頷けるか。
コミュニケーションでの基本は「話す」という行為ですが、それよりも「アイコンタクト」の方がもっと効果的ともいいます。ダイレクトですものね。
昔から「目は口ほどにものを言う」と云いますから。

さらに、茂木健一郎は語ります。
第一印象は重要なファクターだと。
その為に女性は全体のお化粧もさることながら、アイメークを念入りにするのはこのためだそうです。
アイラインをくっきり強調し、アイシャドウでより鮮明に印象付け、マスカラでまつ毛を強化して人目を引く。メイクのひとつひとつに脳に喜びを与える行為を女性は自然に行い、他者とのコミュニケーションに備える。
他者と目と目とが合えば、「このひとから注意を向けられている」や「関心を持たれている」と感じ、脳にドーパミンが発生し、喜びを得るという図式らしい。そして、より美しなる。この繰り返しだと。それも毎日です。これはすごい事です。

そう云えば、子供が困ったことがあったとき、無意識に母親の方を見る。すると母親もやさしく見つめ返すことで、見つめ、見つめ返す。見つめ返された子供の脳は喜び、より愛情に濃厚さを増し、親子間の絆がより強固になるという連鎖反応が行われているのでしょう。でも、昔の親子関係はそうでしたが、今はなかなか難しそうですね。

ただ、想いを寄せる人に出会えれば脳は喜び、ますますその人に会いたくなるものです。ドーパミンの放出によって脳は快楽を得て、更に、更に、快楽得ようと行動を強化するということになります。
これを「病みつきになる」かまたは、「クセになる」と云い換えましょう。
茂木健一郎さんが云いたいのは、
女性がこの世に存在すること自体が、感動を呼び、共感させ、感謝の気持ちに変わると云うことでしょうか。
だとしたら、私の母の口ぐちのように、女性の存在意義は高く、大切に守るべきものなのでしょうね。

ひと回り年上の従兄弟から聴かされた、生まれて初めてのJAZZは約5分半もある"ティク・ファイブ(Take Five)"と云う曲でした。そろそろ進路を決定しなくてならない中学二年の冬でした。
その時、田舎育ちの14才が受けた衝撃は強烈でした。
あの時の感覚を思うと、今でも鳥肌が立つ思いがします。あれからすでに40年も経ちますが、継続してJAZZを聴くことになったのは、やはり"Take Five"との出会いがあったからでしょう。
ティク・ファイブのメロディは、14才の中学生にとって全く聴いたことのない音階とリズムでした。従兄弟の心配そうな顔をよそ目に続けて何十回、数時間も聴いていた記憶があります。
運が良かったのか、この時二人の兄が数カ月分のサラリーを投じて音響プレーヤーを購入していました。アンプとスピーカーがセパレートされた本格的(?)なステレオです。

もちろんアナログレコードですが、確か33回転の10インチ版だったと記憶しています。今の若い人が聞いても意味不明な言葉でしょうね。テイク・ファイブは、デイヴ・ブルーベック・カルテット(The Dave Brubeck Quartet)の最も代表的な曲です。この曲で彼らは一躍有名になりました。リズムは今では古典的ですが、4分の5拍子が作り出す独特なリズムは自然に体が反応できる階調が含んでいます。当時旋風のように日本に上陸した典型的なウェスト・コースト・ジャズでした。とても軽快で清々しさが余韻として残る曲調です。作曲は、ブルーベックではなくカルテットのメンバーのサックス奏者の"ポール・デスモンド"です。確か彼は30年ほど前に亡くなった記事を読んだことがあります。

突然ティク・ファイブを思い出しのは、つい最近二枚のCDを手に入れたことが原因です。
一枚は、
AT THE MONTREUX JAZZ FESTIVAL」(アットザモントルージャズフェスティバル)
"伊藤君子 with 小曽根真" で、フェステバルの実況録音です。
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もう一枚は、もっと古い復刻版で、
Harlequin
"Dave Grusin & Lee Ritenour + Ivan Lins (デイブ・グルーシン& リー・リトナー+イヴァン・リンス)" です。

伊藤君子の「AT THE MONTREUX .....」は、数年前に大学に入ってJAZZ好きになった姪っ子にあげてしまったので再購入です。このCDは廃盤になっていましたが今年リイッシュされました。日本人のジャス・ボーカルで最も好きな歌姫のなかのひとりです。小曽根真は若い時から聴いていますが、今では「世界の小曽根」と言われるほど著名人になりました。珍しいボーカルとピアノのデュオですが、とても素晴らしく仕上がっています。

また、 「Harlequin」 は25年前にリリースされたLPレコードを持っていますが、アナログをiPodへのCopyが面倒なので今回復刻版米国製CDを買うことにしました。伊藤君子のCDは97年のスイス・モントリオールのジャズ・フェステバルの収録版です。いずれも古いものですが、この二枚のCDは私自身の出来ごとも絡んで記憶に色濃く存在するものです。

定期的にボディ&ソウル(B&S)で聴いている伊藤君子は現在64才です。B&Sには必ず月に一度は歌います。ママの京子さんともとても懇意な関係でライブ中に掛け合いの冗談をいいあったりします。私は彼女が三十代の頃から聴き続けています。その殆どはライブハウスでした。

「AT THE MONTREUX .....」を少し説明させてください。
三曲目に"アイランド(Island)"という曲があります。彼女の持ち歌の中でもとても好きな曲です。この曲は、「Harlequin」にゲスト出演しているブラジル出身のイヴァン・リンスが『コメサール・ヂ・ノーヴォ Comecar de Novo』という曲を原曲としています。この人は多彩です。時たま来日しますが、往年の面影を残しつつカッコよさは抜群です。彼が書いた曲は多くのビック・アーティストがカバーしている程の作曲家で、彼自身の歌やピアノよりも著名です。でも、その声は独特でとても魅力的なんです。たぶん、一度耳にしたら決して忘れることができないでしょう。

五曲目にJAZZをあまり聴かない人でも知っている"フォロー・ミー(Follow Me)"があります。
スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴのアランフエス協奏曲第2楽章に歌詞を付けたものです。JAZZの曲にアランフエス協奏曲をモチーフした曲が数多くありますが、歌詞を付けた曲はこの"Follow Me"だけだと思います。アランフエス協奏曲は第三楽章までありますが、特にこの第二楽章がもっとも長く、スローテンポで美しく、哀愁が漂う管弦楽です。
アランフエス協奏曲で最も著名なアレンジは、マイルス・デイヴィスの『スケッチ・オブ・スペイン』であると私は思います。30年で数百回は聴いていると思います。

監督と脚本を担当した押井守の約9年ぶりのアニメーションに「イノセント」がありますが、その映画のエンディングに流れた曲が伊藤君子の「Follow Me」でした。この映画は、2004年の日本SF大賞受賞してますし、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にて実際に上映されたアニメーション作品では「初」だそうです。前作は1995年に公開された『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』です。この映画はTV放映もしましたので、沢山の人がご覧になっていると思います。もう少しその著名度を具体的に云えばキアヌ・リーブス主演のマトリックスに多大な影響を与えた作品と云えばより斬新な企画作品であることが想像が出来ると思います。

これはB&Sで実際に伊藤君子が語っていましたが、「Follow Me」を使いたいと提案したのは製作を担当したスタジオジブリの鈴木敏夫だったそうです。彼は、以前からこの曲を知っていて機会あれば是非使ってみたいと思っていたらしく、その願いがやったかなっとお会いした時に云っていたそうです。しかし、CDで聴く「Follow Me」と「イノセンス」聴く「Follow Me」では映画のストーリー性だけでは表現できない「より悲しげな」哀愁さが含まれています。彼女に質問すると「にっこり」笑って、映画のイノセンスのFollow Meは「半音下げてるの」と、その微妙な哀愁さを半音下げることによって表現していると話してくれました。

一つ、エピソードがあります。
「イノセンス」の試写会での事です。この作品の初上映の時、エンディングは数秒真っ暗になります。そして「Follow Me」が流れる訳ですが、曲が終わるまで観客は誰一人として席を立たなかったそうです。それだけ、この曲が持つ哀愁さは作品である「イノセンス」と同化したのだと感じます。勿論この曲は彼女しか歌えない事もその大きな理由でしょう。

さらに、彼女のこのアルバムの9曲目に 「スカイラーク」があります。
小さい時から「美空ひばり」が好きでラジオ番組から流れる彼女の歌声に魅了され、歌手を志望したとこれも時折ライブで彼女自身が語ります。「スカイラーク」の原曲はアストル・ピアソラの曲です。ピアソラ自身に了解を得て米国人の知人と詩を書いたそうです。「美空ひばり」に捧げる曲として毎回こう説明し歌い始めます。
純粋な日本人である私には、ピアソラの曲に英語の歌詞がついてもこの曲が「演歌」として聞えてきます。JAZZを聴きながら演歌を感じさせる曲は出会ったことはありません。それだけJAZZでありながら日本人である私の魂を揺さぶることが出来る素晴らしい演歌の心を持った曲と云えるかも知れません。
彼女がこの曲を謡う時、全身全霊の迫力が直接伝わって来ます。
この三曲は、B&Sでリクエストすれば快く歌ってくれます。
但し、春先は厳しい曲は歌えないかも知れません。彼女は重症な花粉症です。


ここで少し、「Harlequin」の "Dave Grusin & Lee Ritenour + Ivan Lins (デイブ・グルーシン& リー・リトナー+イヴァン・リンス)" の話しをしないと紙面が足りなくなりそうです。
ギターリストの「 リー・リトナー」の20才から聴いている天才的なギターリストです。沢山のレコード(!)を持っています。
デイブ・グルーシンとのこのセッションは今でも十分に通用する洗練さと高度な技法の音楽構成です。その上、幻想的な「イヴァン・リンス」の歌声が入るわけで、1985年にリリースされたのにも関わらず、現代でも全く色あせることのない名盤であると信じています。いつかこの続きを書こうと思います。

この二枚のCDは私に大量のドーパミンを放出させます。
音楽は人を幸せにします。

 

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