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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

新しいシルクロード

2009.08.23

   子供たちが空に向かい 両手をひろげ
   鳥や雲や夢までも つかもうとしている
   その姿は きのうまでの 何もしらない私
   あなたに この指が届くと信じていた
   空と大地が ふれあう彼方 あなたにとって私 
   ただの通りすがり ちっと振り向いてみただけの 異邦人

この美しい詩は「異邦人」という曲で久保田早紀が1979年に作詞・作曲し、そして自ら歌い大ヒットしましたポピュラーソングです。そして、今までに何度もカバーされた名曲といえます。

徳永英明というハスキーで、高域音がキレイな歌手が、過去に大ヒットした女性ボーカルの曲だけを収録した三枚のCDシリーズがあります。彼自身の自曲の歌も美しい旋律ですが、彼の選んだ女性ボーカルの曲も劣らず絶妙です。特にあの歌声は女性に大人気ですが、このCDの中で彼が歌う数曲にとても魅力を感じます。そして、異邦人はこの中にもカバーされています。
私は、カラオケというものを10年ほど前に体験しましたが、それ以前は、人前で歌を披露する度胸を持ちあわせていませんでした。それは、ひとつの拘(こだわ)りといえるかも知れません。
それが、起業をきっかけに、人の付き合いの中でどうしても避けられないと納得した時点で、この拘りを捨てました。以来、カラオケを少なくとも以前よりは楽しく振舞えるようになりました。

たくさんの歌手がカバーする異邦人ですが、私は特に徳永英明の歌声が好きです。たまに誘われてカラオケしますが、映像が決まってイスタンブールなんです。異邦人とは字のごとく外国に定住または長期滞在する外国人を意味しますが、少し前まではコンスタンティノーブルと名づけられていたイスタンブールとの関連性は全く無い様に思えますが、不思議と映像とメロディーが素晴らしくマッチングします。

コンスタンティノーブルはシルクロードの臍(ヘソ)にあたる最も重要な結節ポイントです。
この西に、この道の到着点であるローマがあります。そして東に、出発点の長安(現在の西安・兵馬俑で有名な)があります。中国、モンゴルと中央アジアの地獄のような砂漠を横断する、長い長い乾いた道をローマから長安を結ぶ長距離交易路が、絹の道といわれる「シルクロード」であることは誰ひとり知らぬものはないほど、ひとつの言葉として認識されています。この路はまさに、世界史の背骨というべき道です。
中国製の「シルク」をローマまで運ぶ道であったために、ドイツの地理学者「リヒトホーフェン」が"絹の道"と命名しましたが、もちろんシルクだけでなくあらゆる商品が行き来しました。しかし、これほど名前と現実の世界が大きくかけ離れた印象をもつ言葉はないと思います。

イスタンブールはトルコの首都ですが、西に隣接するブルガリアやその北にあるルーマニアは黒海に面したバルカン諸国です。この地は、古代から様々な民族が入り込む一方、東ローマ帝国やオスマン帝国に長く支配されました。私の仲の良い知人にルーマニア人がいます。ルーマニアは陽気な社会主義国家と言えます。ブルガリアやユーゴスラビアはスラブ民族系と言う感じを強く受けますが、ルーマニアはラテン民族の血を強く引いていると言われています。その意味では知人は底抜けに明るい人です。どう見てもラテンとしか言いようのない気質を感じます。彼女は自国のルーマニア語とスペイン語とイタリア語を自在に操り、日本語も漢字以外はほぼ使いこなします。
ルーマニアを持ち出したのは意味があります。
バルカン地方は、九世紀から十世紀にかけてビザンチン僧侶が熱心に、布教をした地域でもあります。その為に正教協会が、農村の隅々まで建てられていると言われいます。この教会こそビザンチン芸術であり、ビザンチン文化です。
この地方のどこに行ってもビザンチン様式の修道院や宗教絵画をお目にかかることができるそうです。

そのビザンチン文化を生んだ東ローマ帝国は、1453年にオスマン・トルコの攻撃を受けて滅びてしまいますが、ビザンチン芸術は東欧諸国にしっかりとと引き継がれていきます。
そして、ルーマニアに世界的に著名な文化遺産があります。
それはビザンチン帝国が滅び去る瞬間を描いた「コンスタンティノーブルの攻城」という大壁面画です。もちろん件の彼女はこの壁画の存在を知っていましたが、実物は見たことが無いと。私はこの絵をよく知っています。もちろん美術書で。
もともとビザンチン帝国の最後の日をテーマにした絵画は少ないうえに、この壁画は「負けた側」が製作しています。その事に驚異を感じつつ、伝統的なビザンチン様式で書かれたこの絵画は静かですが込み上げて来る迫力を感じます。実際の壁画を見たいものです。

コンスタンティノーブルと長安(西安)の中間地点に今の"ウズベキスタン"があります。世界遺産も多数あります。シルクロード時代の地名は、"ブハラ"、"クシャニーヤ"、"サマルカンド"、"カフダーン"等です。当時の結節点ですが、現在は周囲を山や砂漠に囲まれたこの国は、中央アジア観光の拠点でもあります。現在では、地上の道路とエアルートがウズベキスタンの生命線ともいえますが、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチを経由して天山山脈などの山々を越えて、首都のタシケントに通ずる途中にウイグル人、カザフ人、ウズベキ人のイスラム商人たちは何百年もの間、交易の歴史を刻んできた事になります。それもほとんどが、乾燥しきった延々と続く大地を経てです。

そして、ここに二十一世紀のシルクロードが出来つつあります。
エアルートと陸に加えて、パイプラインの新たなルートの誕生です。
膨大な石油と天然ガスを連続的に運ぶ第三のシルクロードとなります。
カスピ海に面したトルクメニスタンの豊富な天然ガスをウズベキスタンとカザフスタン経由で中国・新疆ウングル自治区に運ぶガス・パイプライン構想は全長二千キロにもなる大プロジェクトでしたが、着工からたくさんの問題点をクリアーしながら完成間近い局面にきています。最終的には広東省の広州と接続する予定であるために、その距離は九千キロに達するそうです。
また、今年末にはカスピ海で採掘した大量の石油輸出のための石油パイプラインの建設も山場を迎えて、ガス同様に石油も全線開通の見込みらしいです。

中央アジアの新シルクロードの権益の争奪戦には以前からロシアと欧米諸国が「グレート・ゲーム」を展開していましたが、最近では中国がこの戦略ゲームに参加してより混迷度を増しているようです。中国は膨大な外貨(ほとんど米ドルでずが)を資金援助と称してばら撒き、引き換えに資源開発の利権を手にいれ、既得者を追い上げています。

古来シルクロードは高権益とハイ・リスクのキャラバン隊のビジネス・ルートでした。
中国からは西欧諸国に全く存在しない陶磁器が運ばれました。唐三彩、宋の白磁、青磁、中国の越州窯、長沙窯、竜泉窯、景徳鎮窯とありとあらゆる年代、場所からの陶磁器です。それも想像を絶する高値で取引されていました。
また、漢の人々は西域の珠玉を欲し、
ローマ人は、それが動物繊維なのか植物繊維なのか知らぬまま中国の絹を身にまとい、宝物として大事にしました。

では、新しいパイプラインの新シルクロードは、どうでしよう。
パイプラインの通過点にモザイク模様のように点在する少数民族が存在します。それはかってロシアや中国に国家的に且つ民族的に虐げられてきた少数民族ともいえます。彼らには彼らなりのそれぞれの生い立ちによる思想があります。これが最も大きなリスクとなります。しばらくすれば、これらの利権を獲得した諸国がこのリスク回避をどのようにするかを見ることが出来るばずです。
そして、この諸国は"シルクロード"と呼ばれる美しい言葉の響きが「幻」かまたは「現実」を実感することになるでしょう。

 

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