BrainSellers.com

Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

食と芸術

2009.07.24

雨ニモマケズ.....風ニモマケズ.....雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ............」
そして、
「.....一日ニ玄米四合ト、味噌ト少シノ野菜ヲタベ.....」と続く詩は著名な明治の大詩人・宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の中の一小節です。誰でもが一度は口ずさんだ有名な詩です。賢治は他にも身近なことをテーマした詩が多く、なかでも「銀河鉄道の夜」や「風の又三郎」は幻想的で、叙情的で、とても美しい詩です。それに夢があります。
彼は、叙情的な詩を詠う詩人としてだけでなく..一日ニ玄米四合ト、味噌ト少シノ野菜ヲタベ..にあるように、農民の日常生活を芸術の域にまで高めようと理想に燃えていた科学者でもあったと言われています。食というあり前のことを、単に食の充足のみとする従来の考えから脱却する発想をもっていたと言われています。
「食」を理論的な視点で語ると、
『人間が社会的・歴史的存在である限りにおいて、食にまつわる儀式や習慣、食品や料理法への知的理解度、さらには食事の作法やその場での演出等々、全てをあわせ持ったものが「食」であり、食そのものが重要な文化的要素である』だそうです。まったくもって妙を得ていると思います。

しかし、過去の日本の文人や学者は、どうしても孔子の「論語」の思想が支配的だった為に、いわゆる「君子は道を謀りて食を謀らず」や孟子の「君子は厨房を遠ざく」といった類の儒教的な発想で長い間推移してきた背景があります。私も大いに孟子の教えを盲目的に守っているひとりであると自認していますが。。。。

私の知人に自分の本業のほかに「ベジタブル&フルーツマイスター」の活動を野菜ソムリエとして、アンチエイジングライフを楽しんでいる方がいます。
コンセプトは、「アンチエイジング医学に基づいたものでありながら、人間の自然治癒力、免疫力、潜在能力を引きだすこと。」だそうです。野菜と果物に含まれる抗酸化物質による酸化防止等によって、驚くほどアンチエイジングになり、生活空間を変えられるそうです。よ。

食とは、全てひとの口に入るもの。
その影響は10年後や20年後に現れてくるものだと思っています。とても重要な生活そのものですね。
ところで、
日本の芸術や芸能のルーツを辿れば、やはり中国から渡来したと誰でも想像し、知っていることですが、日本の芸術や芸能のほとんどは中国のいわゆる唐様の芸術や芸能の輸入です。しかし、一旦輸入されると、国内に定着しはじめ、その後「その風土や習慣にとけ込んでしまう」ところが日本的でとても面白いですね。また、それ以前に渡来して定着したものにも、新たに新規の文化が混入し、重なり、より和洋化された文化が醸成されるという訳です。そして何年も重ねて、混ざって、独自化したのですね。
日本人の受け入れ安さと工夫は素晴らしいものがあります。時間が経つにつれて日本固有の文化に成長するのですから。

芸術や芸能」はそれぞれの発展過程で、修行や鍛錬が厳しく行われ、競演や競技に発展し、理論武装され、その道の極意が発見されるまでに至ります。
日本の文化は多岐にわたりますが、代表的な芸術・芸能は六道と言われいます。
書道、花道、連歌道、能楽道、花道、茶道です。

しかし、前述の「料理」または「料理法」に関する芸術性や長い伝統で育成された文化は、なぜかこの六道に列挙されていないのです。それは、儒教のせいでしょうか。それとも、元々食という文化は理論や極意を必要としない領域なのでしょうか?

現代まで、料理または料理法も当然ながら長い年月を経て熟成し、芸能といわれる域に達していると感じますが、さて「」に数えられないその理由はあるのでしょうか?

私の「」の最初のガイド・ブックは邱永漢(きゅう・えいかん)の「食は広州にあり」でした。作家であり、経済評論家であり、経営コンサルタントという台湾人で多彩な人です。この本で中国の究極の食文化を知りました。
また、食を文化とする動きは料理という日常的具現化する試みとして東西に古典的なふたりの著著があることを知りました。

中国人の袁枚(えんばい)の「隋園食単(ずいえんしょくたん)」と仏人のジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランの「美味礼讃(びみらいさん)」です。いずれも食または料理を学問として勉強する時に必ず出会う有名な著書だと思います。きっとフランス料理などを勉強する人は、180年前のサヴァランのこの書籍に出会うのでしょうね。なぜか、そのことが幻想的に感じるのは、少々少女っぽい感傷でしょうか?
袁枚(1716年 - 1797年)は清朝中国の詩人・散文作家。現在の浙江省杭州の出身で、12歳で生員に合格し1738年に挙人となり、翌年には24歳で進士に及第した秀才です。ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin, 1755年 - 1826年)はフランスの法曹家に生まれて大審院判事となり、解剖学・生理学・化学・天文学・文学に精通し、詩を書き、作曲もこなしたとあります。
前者は1792年(乾隆57年・寛政四年)、後者は1825年(文政八年)の刊行です。両人とも長寿を全うした多芸多才の人でした。

丁度、同じ時代の日本はというと、まさに料理文化がひとつの山場を迎えていました。
数多くの料理本が上梓され、レストランが贅を尽くして競い合い、料理が文化として江戸の人々に享受されていたのです。
ただし、能や茶道のように食に関する大著が文人によって生まれはしなかったようです。
といいながら、このころの江戸幕府の農民法令には、
一、在々(ざいざい)百姓食物(ひゃくしょうしょくもつ)の事、雑穀(ざっこく)を用い、米を多く食べ候はせぬ様に申し付けられるべ候事。
とあります。飢饉時ばかりでなく、平時においても農民の食生活の基本を「雑穀専一」としたのは、年貢としての米の収穫が幕府の根幹であったとこを想像できますが、飢饉によって餓死者が続出する一方で、初鰹一本に大枚をはたいて"通"を自認して喜ぶひがいるという構図も、同時代的に存在したのです。
この両極の現象もまた、食生活であり、食文化という概念でとらえるしかないのでしょうか。

サヴァランの生きてる時代のフランスは、西欧の中ですば抜けて料理をリードしていく食文化を醸成しましたが、実は中国の料理はすでに五世紀ころから、アラビアでは11-12世紀ころから発達していたそうです。西洋では、やっと15世紀になって、初めてアラビアの料理の影響を受けてイタリアで調理に工夫がされるようになり、ついでフランスが16世紀以降料理の本場になったのは周知の通りです。では、中世の西欧人の食事はどんな物だったかというと、かなり見劣りする食卓であったようです。
中世のヨーロッパは農牧に依存しており、放牧や飼料が乏しくなる冬の前に、自分の家畜の数を制限する必要上、一部を屠殺して、食料として保存したそうです。勿論、越冬食です。この為、この塩漬けした肉を半年以上食べなければなりません。そこでこの食材の調理法というと、自ずと匂いを消すことと、塩辛さを抜くということが重要な課題でした。そのこで最も料理に必要だった調理素材は、胡椒、しょうが、肉桂、サフラン、丁子等の香辛料ということになります。ですから、どんなに高価でも香辛料を輸入しなければならなかったのです。
このブログのカティ・サークお茶と香辛料を運ぶために、必然的にこの世に現れたという訳です。

私は個人的に池波正太郎の「鬼平」や「梅安」や藤沢周平の「剣客商売」が好きですが、小説に出てくる小料理屋とか料亭での料理に江戸人の食文化を感じます。江戸人の味覚はどんなものだったろうかと思うときがありますが、江戸人は実際に存在したのにも関わらず、彼らの味覚を再現できるはずないところに、その時代の「いまを生きる」という食文化の、いわば立ち止まることのない変化を改めて思います。

食べるということは、生きるということと切っても切れない関係です。私たちは毎日食事をしなければなりません。なので直接健康に関わってくるわけです。毎日頻繁に行う、もっとも生きる上で重要なこの行為を、私たちは今までかなり疎かにしていると思います。豊かな人生を送るために豊かな食事をする。これは豪華という意味ではなく、「食育」を考えた心のこもった食事という意味で捉えるべきなンでしょう。

では、食の文化とは何でしょうか?
それはきっと、それぞれの歴史的環境に応じて、その時代に見合った食材、料理、料理法と、食という根本を食育という概念で包み込んだものと理解したほうがよさそうです。
また、「食育」とは食文化を通して食にまつわる教養を身につけることと解釈できるのでは。
いずれにしても、人間にとって食育は生涯のもっとも重要なテーマとなりそうです。
それは、子供のための発育の食育、働き盛りのための生活習慣病予防の食育、そして、シニア世代の健康維持の食育と生涯を関連付けて、かつ継続して考えなければ完結しないものだからです。

私たちは、料理を自らすることで五感を高められると思います。そこにはきっと、好奇心や想像力や吸収力が自然と養われているのではないでしょうか。
なので「食」と「育」がひとつの言葉とて存在しているのでしょう。
私たちひとりひとりが、食文化と食育を正しく捕らえることで、健全な心と体をつくり、未病で健康な食生活を送ることができると思います。それがもっとも近道と思える王道の様に思えてなりません。

 

Copyright(c) BrainSellers.com Corp. All rights reserved.