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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

知の資本家

2006.08.03

彼は会席の席にそそくさと座るなり
「渡邉さん、この後の見通し、どうなると思います!?」
「どう!?って、何が?」と投げかけると、
「いやいや、景気ですよ。景気!」

大手ECネット企業の上級役員の彼は近々迎える上期の業績とそれに連動する株価が気になる所です。上期が終わるこの時期に下期の景気動向を見極めることも次の手を打つにも必要なことです。
僕は一言、「不透明」というのがその時の回答でした。
全体的にいい感じで推移していますが、年末までこの状態が続くとは決断できずにいるので、大きな投資は控えたいとも付け加えました。
既に彼と会食したこの時点で新興市場の下落が相当な勢いで始まっていました。最も、その時は「下落率は3割を超える」とは思っていませんでしたが。
彼は「ゼロ金利解除」のタイミングなどの要因を議論する「愚」を避けて、もっぱら前向きで実質的なビジネスを語っていました。さすがは公開企業のマネージメントだ。と、感心する。

日経新聞の一面のコラムにこんなことが書かれています。

グーグルの創業者の一人ラリー・ペイジは未だ33歳ですが、今問題になっている「会社は誰のもか?」というテーマに一石を投じる概念を持っています。
それは、
創業者による株主への手紙の中に明記されています。
一般の株主は利益配分権は持つが、会社の重要事項を左右する決定権はごく限られている。」というお手紙です。
普通は会社の重要事項に株主は「物言う」ことになります。
しかし、
高利益配当を出し続けて居る限り「グーグルは普通の会社ではない」ということでしょうか?
現在の株式会社は1株=一議決権という株主民主主義の原則があります。
これにに反しグーグルはあえて、背を向けているという。
会社の命運を決めるのは知識を提供している価値あるサービス生み出す経営者や社員であり、カネの出し手ではない。」
株主では無いと言うことです。ここまで云える日本の経営者はおりません。
たった10年で時価総額10兆円に成長した企業ならではです。
グーグルは、
創業者を中心とする経営陣が議決権の大きい特殊株を持ち、その「議決権は78%」を占めるそうです。一般株主は投資リターンは得られても会社の重要な決定には事実上関与できない仕組みになっているようです。

また、先ごろ日本能率協会が興味深い調査をしています。

2006年の上場企業の新任取締役
□企業の利害関係で誰の利益を重要視するかという質問に対して、
 ■「従業員」と応えた新任取締役は42.3%に対して、
 ■「株主」に対して25.1%を優に上回っています。

従業員が株主を上回ったのは1998年に調査を開始して始めてだそうです。とても興味深いデータですね。
この理由は日本企業の多くが人員削減で柱とする合理化でバブル崩壊後の10年の不況を乗り切った事もあり、今後は従業員に報いたいという現われでは無いかと推測しているようです。因みに昨年度の「株主」は37.4%で、時代背景の影響を受けた年と云えるのではないでしょうか。

さらに、
□「M&Aや提携」についての調査では、
 ■現実的な課題であり、積極的に取り組むべきだという質問に、
   ◇取り組むべきが29.1%
   ◇将来的にも可能性は少ないが11.4%だったようです。
ここにも微妙な要素がある様です。

この調査は毎年7月に実施し、その年〔1-6月〕に新たに取締役に就任した963人に対して行った模様です。

つい先ごろから話題になっている「王子製紙の北越製紙へのTBO」は企業価値の向上に繋がるのであれば、今まで大企業に馴染みの無かった敵対的TOBも辞さないという「」の時代から、顧客や株主の利益を重視する「」の時代に移行している現われと言われています。
その「理」ですが、「国家の品格」の著者・藤原正彦氏はその著書の中で「理のみで徹底していくとほぼ必然的に人間社会が破綻に陥る」と強く警鐘しています。彼の説明は非常に判りやすく、納得性が高いと思います。

さて、古武士の思わせる王子製紙・篠田社長が「ためらいを思いつつ」も、敵対的TOBに踏み切った王子丸の進路と北越丸の母港探しは、どの様に「着地点」を模索するのでしょうか?

衝撃的な予測概念があります。
「21世紀はインテレクチュアル・キャピタリスト〔知の資本家〕がファイナンシャル・キャピタリスト〔カネの資本家〕より優位に立つであろう」と。
これは昨年なくなった米国経済学者ピーター・ドラッカーの語った言葉だそうです。
この大逆転の発想は、
「カネの希少性が薄れる一方で人的資本の重要性は高まり、株主万能モデルはいずれ挫折するであろう。」という長期的予測だそうです。
日本でもつい最近まで「株主は自分の利益のために、他のステークホルダー〔利害関係者〕に犠牲をしいてもいいのか」という議論が沸き起こりました。

さて、「理の追求」か「惻隠の情」か、きっと数年後には結果が出ることでしょう。

 

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