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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

ホルムズ海峡封鎖!!

2006.03.25

ホルムズ海峡封鎖を警告」は両刃の剣

先ごろニュースによるとイランのプルモハンマディ内相は国連安全保障理事会が核問題の本格協議入りに向けた動きを強めていることについて「われわれは世界最大で最も敏感なエネルギー輸送の航路を抱えている」と述べそうです。これは「ホルムズ海峡を封鎖」の恫喝とも云える報復行動です。中東の石油輸出の要所であるホルムズ海峡の封鎖は過去の歴史から見てとても重要且つ国際的な波紋を呼ぶ「警告」として多くの西側諸国を刺激することでしょう。

塩野七生女史の著作に「コンスタンティノープルの陥落」という小説があります。15世紀後半に東ローマ帝国の首都として千年あまりも栄えた独自文化を誇った都市がオスマン・トルコ皇帝マホメッド二世によって崩壊するまでを描いた小説ですがキリスト教世界とイスラム世界との覇権闘争の一面を盛り込んだ読み応えあるものでした。当時のオスマン・トルコ皇帝マホメッド二世もコンスタンティノープルを落とす時に「金角湾とボスポラス海峡」を押さえます。コンスタンティノープルは現代のイスタンブールですが、ヨーロッパとアジアの接点であるこの都市は、「金角湾とボスポラス海峡」が要です。イランの「ホルムズ海峡」と同じ意味を持つものです。
アデン(Aden)という比較的大きな港町があります。
現在はイエメンの港湾都市ですが少し前は「旧南イエメン」の首都でした。古くから海運の要衝です。オスマン帝国時代から注力され、その後エジプトの支配をへて現在の港湾の規模に開発されたのはイギリス統治下においてです。このアデンに一度バンカーリング〔燃料補給〕のために寄港した事があります。だだっ広い港内に長いバース〔岸壁〕が記憶にあります。港内は整備されておりバラスト調整しなくても水深は十分でした。

ホルムズ海峡が閉ざされれば、イラン、サウジアラビア、アラブ等全ての石油の輸出ができない事態になります。イランのプルモハンマディ内相は「核問題が安保理で本格協議されれば、その代償は極めて高いものになる」と指摘し、且つ「われわれは間違いなく石油を道具として使うだろう」と恫喝まがいの持論を張っています。

1956年に「スエズ動乱」が起こりました。
翌年ナセル大統領は「ホルムズ海峡」からスエズ運河周辺までを50隻の商船を沈め事実上「スエズ運河の封鎖」を決行し、世界のタンカーの通行を不能としました。エジプト国民はナセル大統領に喝采しましたが、世界経済は大混乱に陥りました。それから約10年後、僕がアデン(Aden)で燃料補給して南アフリカ共和国の喜望峰を超えて4,000マイルの迂回航路をしたのはやはり「スエズ運河封鎖」が理由です。この年から数年でスエズ運河は通行可能となりましたが僕はその翌年船を降りたので、スエズを通過する機会は訪れる事はありませんでした。

でも「スエズ運河封鎖」は世界の混乱だけでなく怪我の巧妙もありました。
それは「スエズ・ブーム」といわれるものです。
「スエズ運河封鎖」によって世界の海運界にタンカーの大型化を求められましたが、当時十分な設備投資と高度な造船技術を持つ日本にそのバックログが全て来ました。世界のタンカーの発注の9割を吸収した国内の大手造船企業は当然の如く驚異的な発展のきっかけとなりました。他人の不幸を上手く活用する様で後味の悪い結果ですがこれも世の常ですね。
さらに1967年6月の再度勃発した中東紛争によって世界の船舶運賃はより急騰し、今度は国内の海運界が儲けに儲けました。そして遂にはスエズ運河に依存しない超大型タンカーや大型バルクキャリア等の世界的な要求が増大し、もっと大きな船が欲しいという事になり、巨大船の造船ブームという波が来たのです。

皮肉なもです。ナセル大統領の一つの政治行動がほぼ地球の反対側の日本という国の造船業や海運業に幸運をもたらしたのですから。この幸運はとても大きなものでした。
そして、
1971年に「日石丸」が就航します。良く覚えています。TVでも多く取り上げられました。大きさは37万2,000トンもあり建造当時は世界最大でした。〔仕様 全長346.75メートル、幅54.5 メートル、深さ35メートル、主機関は蒸気タービン(40000馬力)1基〕
この船は、日本の海運界・造船界の象徴的な役割を果たしたと云えるでしょう。
しかし、常に勝ち続ける事は出来ません。盛者必衰の道理です。

今回の騒動は以前のような単純ではありませんが、是非、対話で外交決着して欲しいものです。

 

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