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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

哀愁の若狭

2005.08.10

種子島銃」は日本で最初のグローバリゼーションです。
そのグローバリゼーションの技術革新が「螺旋と螺子(ネジ)」だったのです。二つの技術革新を乗り越え種子島銃の日本初の模造が出来ました。この異文化で且つ強烈な海外技術を当時の日本人は「驚愕」こそしましたがすんなりと受け入れています。また種子島銃の新製造技術をいちはやく取り入れたのは「根来と堺」です。時代は戦乱期ですので京に近い両者は最新の武器に関心が高かったとも言えますが、やはり磨かれた「投資のセンス」です。今のベンチャーキャピタリストや経営者と同様の思考です。「継続は力なり」。堺で代々老舗を張るのはとても大変な事だったと窺えます。勿論黒潮によって琉球や南海諸島と紀伊沖が一本につながっていたことも大きいでしょう。当然海路の方が陸路よりはやく行き来できますから。このコミュニケーション手段にも洗練さを感じます。長い間に構築したものでしょう。南のはずれの島での出来事も数週間で京や根来に届いたと思われます。さて、本題に。島主種子島の時堯さんは板金兵衛さんにポルトガル銃の模造を命じた訳ですが、昨日もブログに書いたとおり旨くいきません。金兵衛さんは美濃出身で、当時砂鉄の豊富な種子島に渡って来た刀鍛冶でハイ・スキルだった様です。彼は苦心の末、数ヶ月で模造銃を作り上げました。でもこれは根本的な技術を習得したモノでなく、今までのスキルと経験で作りました。ですから銃底部の「雌ネジ」を解決していません。勿論これで試射すると不発や暴発を引き起こし射手が怪我します。昔、製図と工作の実習で自分で「ボルト&ナット」を製図し、その後旋盤で一本の太い円柱から「製図寸法通りのボルト&ナット」を作り出す実習がありました。旋盤が在っても結構ドジして何度も作り変えました。結局、1セットの「ボルト&ナット」を作るのにほぼ一日かかりました。「雌ネジ」の発想の無い金兵衛さんは本当に苦しんだ事でしょう。勿論銃身内の「螺旋」も同様です。ここに「若狭伝説」が生まれるのです。ポルトガル人商人(一説には船長)が「雌ネジ」の製法を教えるかわりに若狭を嫁にくれと金兵衛さんに要求したのです。史実は不明ですが、この方が哀愁があって物語としてはいい。最後に「この紋所が目に入らぬか!!」と格さんが印籠を高々と上げて水戸の黄門様がお出ましになります。ここでは出ませんよ。そして優しい若狭は父のために泣く泣くポルトガルへ行き、金兵衛さんは「国産初ポルトガル・タイプ和製銃」を完成します。その後若狭の消息は不明。これが昨日の続きです。この物語が読みたくて「たまゆらの海―火縄銃悲歌」を以前から探していますが未だに手に入りません。

そして、当時最も先端技術のこの鉄砲をわずか数十年で信長は戦術的・戦闘的に活用し近代的な「戦さ」展開します。また、先進的な各地の「投資家」たちはいち早く、その有効性に触発され、種子島チーム、根来チームまたは雑賀チーム等代表される様な傭兵化集団にまで発展させます。日本で最初に遭遇したグローバリゼーションを昔の日本人は見事に自分のものにしました。ということですね。現代でもその様なセンスのいい経営者がいますね。さらに、その投資が最大限に生かされ、鉄砲を生産する製造技術も世界のトップレベルの技術国なってしまいました。この頃から日本の技術者(職人)の腕は確かなものでした。今は技術の空洞化と嘆いていますが。当時の刀鍛治の一大特需でもありました。スキルの高い鍛治職人は高級をもって迎えられました。天文十二年(1543年)種子島にポルトガル人が鉄砲を持って漂着したとき、信長はわずか九歳でした。彼はその後、世界の合戦記録に不滅の功績として残すほどの戦さをします。そうです。あの天正三年(1575年)5月21日の長篠の戦いです。彼の独特な戦略と戦術により武田の騎馬隊の突撃を三千丁の足軽鉄砲隊で絶え間無く撃ち続け、完膚無きまでに撃破します。時に信長、不惑の41歳。蛇足ですが、信長という人は一面不思議さも感じます。戦国時代の日本の男性として見るとちょっと特殊です。同時代の秀吉や家康と違い、まず女あさりをしない。戦場での振る舞いと全く別人の様に、愛する女性にはやさしく、忠実であったようです。書物によると油と灰を製造する土豪で生駒氏の娘である「生駒吉乃」と近江野洲郡のこちらも土豪高畑氏の娘で小倉なべの二人くらいしかいない。正室さま「通称・農姫様」は別格として。この二人で多くの子供を生しています。人は一面では推し量れないものですね。

 

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