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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

レッドクリフ

2009.06.15

先週の11日に内閣府が2009年1~3月期のGDPの年率換算を「マイナス14.2%」とTVや新聞等に発表しました。少し前の5月20日の速報時の値は「マイナ15.2%」としていましたので、「1.0ポイントの上方修正」を多少控えめでしたが「生産や輸出などの経済指標は上昇に転じており心強い」とTVインタビューで与謝野馨財務・金融・経済財政担当相が自分の事のように喜んでいたのが印象的でした。しかし、大方の見方は前期第3四半期からの2期連続の戦後最悪のマイナス成長を体験していれば、今期最初の第一四半期の企業業績の落ち込みは避けられないという予測です。第4四半期の企業業績の落ち込みは生半可ではありませんでした。なので、その下げ止まりには在庫調整くらいではブレーキ・パワーにならないのであろうという憶測です。聞くところによると今期、大企業の中には販管費の圧縮は今までに無く厳格に行ったが、肝心の年間売上予算は「仮」で走っているという。この過去に例のない暫定的な処置をしなければならないところに事の深刻さが窺い知れます。


最近多くの友人・知人から「レッドクリフPART2を見ました!」という批評を交えて聞くことがあります。その方々は当然「PART1」も見てらっしゃるでしょうね。一つの映画タイトルで二度収益を上げるのですからヒットすれば製作会社としては効果的な方法といえます。レッドクリフの「赤壁」は三国志の物語のもっともエキサイティングな場面の一つです。この史実の子孫である中国人のみならず日本人も韓国人も欧米人も三国志の愛好家たちは多く存在します。まさに世界中の人が知識として持っている「歴史」といえます。
私も中学二年の夏に吉川英治の三国志を読みました。本を読む楽しさを私に教え込んだのは小学校の五年と六年を担当した恩師です。そのせいか中学生の三年間で500冊以上は読んだと思います。その中でも三国志は難解で読みながらメモととった記憶があります。難解であった分だけ長く記憶に残ったことは確かです。後年、社会人になって中堅リーダーとして自分のチームを統べる上で再度、三国志に出合うことになります。
勿論、その時は中学生時代とは比較にならないほど多くの書籍で時代背景も理解しており、且つ二度目でしたのでスムーズに読むことが出来ました。読後、三国志の形成された時代やその後の時代の変遷等も広範囲に読破した記憶があります。

私が読んだ三国志は晋代に書かれた正史「三国志」を基本にしたものでなく、千年後の14世紀に書かれた歴史小説・羅貫中〔ら・かんちゅう〕「三国志演義」を基本ベースとした「吉川英治・三国志」です。正史・陳寿〔ちん・じゅ〕「三国志」は当然ながら「晋王朝」のクーデターでの政権交代とはいえ先代「魏王朝」から政権を引き継いでいますので、少なくとも形の上では三国のうち「魏」だけを正当な王朝としなければ辻褄が合いません。なので「魏」のみ「皇帝」で他の二国は「」としています。勿論正史「三国志」は読んだことはありませんが、その格調高い漢文はどの書籍にも賛美されています。但し大胆に省略している難点があるそうです。その後南北朝時代にはいって宋の裴松之〔はい・しょうし〕という人が大幅に注釈の手を入れたものがすべての三国志の巻に「注」として存在しています。原書の正史「三国志」の和訳本があるそうですが、とても一般人には難解できわめて膨大な量だそうです。

ともあれ、魏の曹操は悪玉、蜀の劉備は善玉、劉備の関羽、張飛との強い結びつき、諸葛孔明の智謀などワクワクする物語の展開です。歴史小説とはいえその後の時代に与えた影響は計り知れないくらい大きいと言えます。「吉川英治・三国志」の冒頭に出てくる「桃園の義」などは正史三国志に無いフィクションと分かっていながら心が躍るのは読んだ人の共通意識だと感じられずにはいられません。

当社の設立は2000年の1月26日ですが、その数ヶ月前の1999年の秋に設立に関してまさに「桃園の義」を行いました。当時の発起人三人で都内の中華レストランで乾杯をし、この乾杯が「桃園の義」であることを語り合ったことを今でも忘れません。10年の間に時代が大きく変わり、当時のメンバーはひとり抜けて二人になりましたが、残った二人は当時のままの気持ちで交流をしています。

冒頭に戻って与謝野さんの大臣としての説明の仕方はともかく第1四半期の業績については慎重な見方が圧倒的です。実質GDPは小幅ながら5期ぶりのプラスになるという観測がありますが、エコノミスト曰く「メインエンジン」にはなり得ないとのこと。やはり本格回復は後半以降になるのでしょうか。
三国志の時代はわずか百年程度です。しかしながらこの時代の密度はきわめて濃いと言えるのではないでしょうか。
三国に人あり。
諸勢力がしのぎを削りあう様相と、その中で生死する英雄たちの人間模様がリアルに且つダイナミックに描かれています。それはまさに百年に一度と言われている大恐慌の混沌とした現代社会の「生存競争の教本」でもあり、「激動の時代をどう生き抜くかという生命哲学の教本」でもあり、多くの事を私たちに今でも語りかけています。レッドクリフのジョン・ウー(呉宇森)監督もTVインタビューで「不況の時代にこの映画を通じて元気を与えたい」とメッセージしていました。この映画の歴史的な背景や三国志の理解度などとりあえず脇において、完全なエンターテイメントとして楽しむほうがその効果は期待以上に得れるかも知れません。


面白いことに宋の裴松之〔はい・しょうし〕注釈書の中に「倭人伝」が入っています。これが日本の歴史で習う「魏志倭人伝」で邪馬台国女王卑弥呼〔ひみこ〕が登場する摩訶不思議な記述の多いあの歴史書です。
卑弥呼の使者が魏の都洛陽〔らくよう〕を訪れたのは、三国志の終焉近い曹操の孫の明帝の時代だと後年知りました。
さらに、悪玉曹操の方がこの時代の歴史小説を読むほど魅力的に感じます。特に一国の経営について彼の行動や施策を見ると顕著で名言も数多くあります。
その一つを紹介してブログ復活の結びとします。

『天下なお未だ安定せず。未だ古に遵(したが)うを得ざるなり。葬終らば、みな服を除け。』(魏書・武帝紀)

抄訳
<天下がまだ定まっていない今、古来のしきたりに従って形式ばったことなどしていられない。私の葬儀が済んだ後、全員直ちに喪服を脱げ。>

要は俺が死んでも「グズグズするな。戦闘開始だ! 」って言っているんでしょうね。

 

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