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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

本多厚美リサイタル2007

2007.11.16

一年ぶりにメゾソプラノの歌姫を見た。

あれから一年を経て本多厚美のリサイタル」で再び彼女と会いました。
昨年の彼女はすっきりと痩せて白い肌が輝かしい歌姫でした。昨年、数年ぶりに見た厚美ちゃんは、驚きと感激のあっという間の二時間のリサイタルでした。
そして、今回は最初の曲目から緊張もなく、いつも練習している彼女の自然な歌声でした。
一年を経てより自信に満ちた「しっとりとした本多厚美」に逢ったわけです。
自然体で楽器のように正確な「メゾソプラノ」で歌う彼女はに、オーラと共に輝き、とても感動的でした。
サントリー小ホールはほぼ満員の観客に迎えられてた彼女は舞台の定位置につきました。
アップヘアーな髪型に、大き目のイアリング、一際目立つV字型のパールのネックレス、そして、コスチュームは淡い黄色のロングトレスという出で立ちでした。

この夜の本多厚美はプログラム通り22曲の「LOVE SONGS」を途中休憩を挟んで歌い続けました。



『本多厚美メゾソプラノリサイタル LOVE SONGS』
□2007年11月15日(木)  □サントリーホール(小ホール)
□ピアノ:ダルトン・ボールドウィン

最初の曲はステファノ・ドナウディの代表作に含まれいる曲でバロック風の曲目
「O del mio amato ben (おお 私の愛する人よ)」が披露されました。
最初の曲らしくリズミカルな洗練された曲調でした。
その歌声は美しく最初から観客を魅了した、聴かせるラブソングでした。


松風(まつかぜ)」という演目の能の三番目物があります。
能の正規の上演形式は、儀式的要素の強い「(おきな)」を最初に、脇能物(わきのうもの)、修羅物(しゅらもの)、鬘物(かつらもの)、雑能物切能物(きりのうもの)のいわゆる五番立で上演されることになっています。能の大成者の世阿弥の伝書「三道」に意味深な言葉があります。
それは、「序破急(じょはきゅう)に五段あり」という言葉です。
もとは雅楽の用語であったとか。
緩急の変化を律する基礎原理にのっとり、連歌や能でもこの原理原則が重んじられるようになり、世阿弥はこの「序破急(じょ・は・きゅう)に五段あり」をより具体的に能の中で理論化したようです。

三番目物は五番立の真ん中にすえられるので、「破の中段(破の破)」と、中軸をなす曲となりますが、およそ三番目物のグループは40曲余りあるそうです。もっもと現代では五番立の長時間の上演はほとんど無く、能三番に狂言二番か能二番に狂言一番といった編成で上演されています。あるいは、能一番、狂言一番とし、加えて連吟(れんぎん)、仕舞(しまい)、舞囃子(まいばやし)など特殊な組み立てで編成を行うことが多く見受けられます。

その中でも「松風(まつかぜ)」はとても著名な謡曲といえます。

作者は世阿弥と言われていますが、古い謡曲理論集には観阿弥作曲の原作を世阿
弥が改修したとありました。ただ能作書には古作能の「潮汲(しおくみ)」が原型ともあります。現代は単に世阿弥作としているようです。

熊野(ゆや)」も名曲と言われていますが、この謡曲は春をテーマにしています。その点松風は「」を季とする名曲です。

この松風の主題ですが、身分の卑しい、二人の海女の姿と心は美しい、少女の一途な恋をテーマにしています。恋の相手は貴人で、片思いとなり、それだけに慕情は烈しく、死後までも、形見を抱きしめて狂おうしく泣くという物悲しいストーリーです。実は、シテは松風ですが、もう一人の海女はツレの村雨(むらさめ)です。狂おうしい二人の舞は圧巻です。

この松風を来月若手能楽師の「山井綱雄」さんがシテの松風を演じます。知人に誘われて彼を知りました。下掛シテ方金春流の故梅村平史朗の孫だそうです。若手の能楽師としては、毛並みも良く、技量も高く、注目の演者と言えると思います。

秋深まる夜には「人恋しく」なるものですが、本多厚美の「LOVE SONGS」も山井綱雄が演じる「松風」も恋をテーマに時を越えて、深まる秋をより感傷的にさせます。

 

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