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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

波エネルギーで6千キロの航海

2006.07.17

現代の日本社会と人間の内面に「古代人の心性」を発掘したのは柳田国男だといわれています。
「古代人の心性」とは表面的には近代的な文化を演技し内面的には封建時代の社会構造と人間関係や考え方を持ちつつ、そこに心性が生きているという事らしい。

柳田国男は日本人の好奇心について多くを語り、好奇心を学問の方法として使いこなしました。好奇心が強いために日本の近代化が早く進み、
しかし同時に上っ面でしか無いとしたら、日本人の好奇心はプラス価値とマイナス価値との両面をもたらしていると言うのが彼の理論です。

好奇心は日本人の特権でなく、人間にとって普遍的な情動です。
でも社会の歴史風土社会構造の違いによって当然ながら好奇心の発動がされる対象が違うと言っています。
それに好奇心の強弱永続性の度合いも大いなるパラメーターであるとも言っています。

日本という島国の地理的条件、
歴史的に開国・鎖国・開国・鎖国という政策の交替による強弱や永続性に与えた影響。

さて、
堀江健一が「太平洋単独航」を成し遂げたのは1962年で彼が24才の時でした。船は19フィートの「マーメイド号」。
そして彼は再び単独航路の冒険をします。それが2004年に船出した「東廻り」の単独無寄港による世界一周です。
船の名は「SUNTORY マーメイド号」でおよそ9ヶ月で帰還を果たしました。

この「東西両方向周り」で世界一周航海はもちろん日本人では初めてで、世界でも、彼を入れても2人しか存在しないそうです。

柳田国男が理論展開した「日本人の好奇心のプラス価値とマイナス価値」ですが、このマイナス価値を克服するパワーもまた「プラス価値の好奇心」の働かせ方によって可能になるかもしれないという発想をした人がいます。この人の理論展開も面白いと思います。そこには二次的な情動として「いき」と「甘え」が好奇心に深く関わっているということらしいです。

堀江さんの「次の挑戦」が始まろうとしています。
今回は「ハワイ・ホノルル→紀伊水道間」での6000㌔㍍の「波浪推進器」という新しい概念の推進システムのテストも兼ねています。
船は「SUNTORYマーメイドⅡ号」といいます。
波浪推進装置」というのは、波から直接推力を発生する装置のことです。大きくは船体部分と、水中翼部分からできていて、波浪から発生する「波エネルギー」を吸収して推力に変換するものです。
原理的には相当古いモデルですが、今までは概念の域を出ていないと言われていました。
この推進装置の特徴は、船体の動揺を抑えることと、推進力を得るという二重の効果が期待できることです。一般的には船体の動揺と推進力は別物です。
それを同時に可能としたところに画期的な技術革新が存在します。
ヨットで不得意ないわゆる向かい風はタック(方向のスイッチ)繰り返しながらジグザグに向かっていくわけですが、この装置を取り付けると、正面向波でも波に向い自走することができるそうです。
実験でも十分な効果を得ているそうです。


なんでも新しいものを取り込んで生活の中に定着させてしまう日本人。
論争を好まず、理論にこだわらず、いち早く妥協を見出し、次々と処理していく国民性。
でも、
堀江健一さんは柳田さんが言う「最も好奇心の強い人」の部類に入るという事になりますが、
進路の決まっている「SUNTORYマーメイドⅡ号」は別として、
僕らの「日本丸」はどこへ行くのでしょうか?


■参考  好奇心と日本人/鶴見和子著

 

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