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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

腐っても鯛 !!

2005.12.09

「腐っても鯛」!!

前回「下りカツオ」のブログをしました。下りカツオですぐに反応された方もいらっしゃいました。お魚は全般的に全て好きですが印象に強く残っているお魚があります。それはカツオでなく「」と「鮟鱇〔あんこう〕」です。何れも子供の頃の経験で父との思い出です。「鮟鱇」は次ぎの機会に譲って今日は「腐っても鯛」と揶揄される「」についてブログします。
昔々の江戸っ子にとって四月、五月の鰹は特別なものであった様ですが17世紀初頭の江戸社会では既に「一汁三菜」を基本とした懐石料理が定着していたようです。秀吉と利休で体表される「侘茶〔わびちゃ〕」の流れを考えても精進料理が前提である事は容易に想像できますね。そこで江戸での料理がどんな物かと必然的に疑問が沸きます。僕は料理を食べることと料理の本や写真集を見ることは出来ますが、「作る」ことは全く出来ません。作る事は大変な事だと思ってます。ですから食べるときには常に「感謝の気持」が必要だなぁと感じています。僕自身は魚であれば母仕込みの三枚におろす程度は出来ます。
江戸の料理を知る上で17世紀の半ばに出版された「料理物語」という本があります。当時の料理全般にわたって記述してある解説書で作者は不明ですがとても興味深い内容です。
この本の中で最も重要な料理素材として「海水魚」が挙げられていますが、この魚の部類を分解すると最上位は「海の幸」です。なぜくどくど説明するか言うと、実は江戸以前の最も重要な料理素材は「川魚」の「鯉〔こい〕」だったのです。
江戸の食文化が「鯉から鯛」へ変えてしまったと云う訳です。選手交代の理由は漁師の技術向上〔人も船も漁具〕と物流だったようです。中世で肉食がタブーの律令的国家であれば淡水魚の鯉が最も採りやすく安定的に供給でき、精進料理の素材としては第一であったのでしょう。
そしてその後は現在まで延々と素材の中では「海の幸」のが第一番とされ、その中でも「」が魚類の王座になったという訳です。
その鯛ですが本来は「真鯛」といいます。わざわざ「真鯛」と言う所に意味があるのです。子供の頃その真鯛を見に行きました。場所は千葉県鴨川市小湊にある「鯛の浦〔妙の浦〕」といところです。50年以上前のことです。検索すると今でも保護されて存在していました。「真鯛」はもともと深海性回遊魚で群れをなさないお魚ですが、僕が生まれる以前からこの浦では比較的浅い水深〔10~20m〕に生息しています。浦にはフェンスも無く、ただ定期的に餌を撒く程度だったと記憶しています。の場所に「群れ」で定住しています。鯛の生息で一般的でないこの現象はよく判っていないようです。昭和42年12月に文化庁の特別天然記念物に指定されたという事です。
小学生の時オヤジさんに連れられて「一丁櫓の伝馬船」に乗り「海女さん」達が餌付けをしているシーンが記憶にあります。確か船頭さんが軽く船べりを「トントン」と叩くとぐんじょう色の深い(僕にはとても深く感じました)底から鯛の群れが海面に浮上して来ました。殆ど素手で採れるような。その時かその後かはもう定かではありませんがオヤジさんから「真鯛の意味」を聞きました。

日本食を主に置いた料理人としては「真鯛」は日本料理から切り離して考えられないくらいに重要な素材だそうです。「美しい形」そして「締りのいい肉感」さらに「風味」とどれをとっても「真鯛」を超える素材はないそうです。「真鯛」に比べると石鯛(いしだい)、石垣鯛(いしがきだい)、金目鯛(きんめだい)、目抜鯛(めぬきだい)、エボ鯛、ニザ鯛、ゴブ鯛、甘鯛(あまだい)は「」という事になるそうです。また、タイ科の魚に真鯛に良く似た「血鯛(ちだい)」「黄鯛(きだい)」がいますが、ちょっと区別が難しい。でも並べると歴然です。「血鯛」は別名「花鯛(はなだい)」と云われる位、色が鮮やかでごまかされてもシロウトには解りません。鯛には間違いはないので。個人的には「金目鯛」の煮付けがとても好きなんですが。この金目鯛の目玉を美味しく食べる知人や友人がいますが、僕は食べれません。僕が子供の頃両親が結婚式から持ち帰る「硬くなった赤飯」と「冷たい鯛」の印象は拭えませんが実はオヤジさんから教えられた「真鯛」はお魚の中での王様だったのです。ずっと後に成人し、「生きた真鯛」を板前がその場でサバくお刺身の美味しさを十分に理解できるような年齢に達しました。

昭和の中ごろまでは「真鯛」といっても街の魚屋さんで買い求めることが出来ました。勿論その頃にはお母さんも「魚の三枚」程度は出来ていたようです。特別な日がやって来ると事前にお魚屋さんに御願いした「真鯛」を三枚に下ろし「片身はお刺身」「片身は塩焼きか煮物」「皮は湯引きして細かく刻み酢の物」そして、最後に残ったカマ(頭)は二つ割りにして「かぶと焼」か「かぶと煮」にします。そうそう、まだ骨がありました。「」は切り落とし「うしお椀」という事になりますね。

鯛の旬ですが、一般的にお魚は産卵後は極端に味が落ちると云われていますが、若い真鯛は一年を通じて一定の味や風味を保っているそうです。ですから日本料理にとって四季を通してなくてはならない魚と言われて居るのでしょう。特に現代では超高級料理の「真鯛の活造り」などは老練な真鯛でなく「若い真鯛」が使われるそうです。何事も「」過ぎるといけないのかも。

 

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