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Cutty Sark

Cutty Sarkは常に夢を追い続ける希望の帆船です。I still have a dreamのこころざしを持って海図にない航路を切り開きます。

海との結婚式

2006.05.03

世界最大の開港祭である「ハンブルクの開港祭」が日本のGW最中に開催されます。

今年で「817回目」を数える「ハンブルクの開港祭」が5月5日から7日の週末に開催されます。この開港祭は世界最古・世界最大といわれています。お祭は、「ハンブルク港」の中心5~6キロの空と市内を流れるエルベ川と市内全域を全面的に使う規模です。3日間で予定されているイベントやプログラムも充実していて観客を飽きさることは無いそうです。3日間目白押しだ。
開催案内によると、
『大型帆船、博物館船、タッグボート等の水上プログラムをはじめ、陸上では500人以上もの役者を投入した「港マイル」が展開。中世ハンザ時代の海賊や船乗りたちの衣装やパフォーマンス、10ヶ所以上に設置されたステージでは多彩な音楽プログラムを楽しむことができる。聖ミヒャエリス教会でのオープンニングミサ、手工芸市、体験マイルなども見逃せない。空の舞台では、歴史的な飛行機やルフトハンザジェット機の航空ショー、パラシュート落下、熱気球遊覧など。夜には港イルミネーションや花火が空を飾る。』などなどです。
毎回100万人以上の観客でにぎわうイベント期間も、市内にはホテルが十分あるので、宿泊には問題がないとお祭りの歴史を感じる港街といえますね。

ユリウス・カエサルが志半ばで暗殺され彼自身の遺言により見出された無名のガイウス・オクタヴィウスは当時18歳の少年でした。しかしシーザーの目利通りオクタヴィウスはローマ帝国の実質的の初代皇帝アウグストゥスと成長します。数々の困難を乗り越えて。そして10世紀が過ぎローマ帝国末期に「ヴェネツッア共和国」が誕生します。
ヴェネツッアは辛うじて盛り上がっている地上と「生きている潟〔ラグーナ〕」の上に築いた国家です。ヴェネツッア人は現在ではユーゴスラビアとなっているアドリア海で船による交易を国のビジネスにしました。
中世の地中海での交易の商品と言うと香料や陶器といった嗜好品と思いがちですが、実はもっと実質的で「塩と塩漬けの魚」だったそうです。その後アフリカの回教徒が望む「木材と奴隷」に変わっていく事になります。
ヴェネツッア人は彼らの力やビジネスの基盤が「」である事を熟知していました。なので、いかなるヴェネツッア人も老朽船でない限り外国に売る事を禁じられていたそうです。たまヴェネツッア人が船を購入したり作ったりする場合は、国内の造船所で作られた船しか購入出来ませんでした。彼らはその様な法律を作ったのです。
ヴェネツッアをその後の共和国として発展の基盤を築き上げたのは991年に元首に就任したピエトロ・オルセオロ二世と言われています。ピエトロが15歳の時、同じ名前を持つ父が元首に選ばれました。しかし、オルセオロ一世は二年後に元首の地位を捨て、僧院に隠遁してしまいます。設立間もない共和国自身がとても不安定な国だったことも大きな要因だったのでしょう。父の隠遁から13年後にオルセオロ二世は30歳という異例の若さで元首に選出されます。


〔ハンザ・コグ 北ドイツやバルト海沿岸のハンザ同盟の都市国家で活用された1本マストのコグ〕

ピエトロ・オルセオロ二世はヴェネツッア共和国の発展に全知能を傾け海洋都市国家としての磐石な地位を築き上げていきます。特にアドリア海を「ヴェネツッアの湾」にしておくためには大きな犠牲を伴いながらも確実に実行されていきます。
彼は元首に就任して17年後に亡くなりましたが、彼の示した基本方針は以後ヴェネツッア共和国が崩壊するままでの800年間守られました。彼には多くの功績がありますが、その中で一つの「文化的行事」を残し、後世の我々は確実に引き継いでいます。
それは「海との結婚式」です。いわゆる「開港記念」です。
ピエトロ・オルセオロ二世は共和国の基盤確立のために自ら陣頭に立ち犠牲を甘受するエリート階級だけでは十分でない事を知っていました。共和国であるヴェネツッアを民衆の支持で勝ち取るために民衆の「感性」を活用したと言われています。それが「海との結婚式」です。12世紀に公式に制定されました。「国民のお祭り」として毎年繰り返す事により、国民の抑揚を一つにまとめ、国家形成の大きな柱に育てたのです。
お祭りの日は、元首・ピエトロ・オルセオロ二世が998年の「5月」の出陣した日としています。
お祭りに何をするのかというと、
毎年その日、時の元首は緋色と金で飾られた儀式用の御座船ブチントーロに貴族達を引き連れて乗り込み、外港であるリドの港に向かう。船上から多くの国民が見守る中で海に向かって言う。
『おまえと結婚する海よ。永遠におまえが私のもであるように』と。そして用意された金の指輪を海中に押す。これで儀式は終わり、ヴェネツッアの庶民はその日は仕事を休み飲んで騒ぐというわけです。


〔海の民・ヴェネツッア人が完成させ二本マストに大三角帆のラティーン・セールを備えた喫水の浅いキャンベル〕

つい数日前に一隻の大型客船が儀装を終え処女航海のために回航されました。
ドイツで作られた世界最大の客船「フリーダム・オブ・ザ・シーズ」です。国籍は米国でクルーズ会社ロイヤル・カリビアン・インターナショナルの所有です。
お披露目の場所は「開港祭」が開かれる自由ハンザ都市ハンブルクです。日本でも昨夜のTVニュースでも沢山取り上げられました。およそ6,000人を収容出来る巨大客船は総トン数16万トン、全長339メートルで船内には、4つのプールやスケート場などが作られているほか、112メートルもの長さのショッピングモール、さらにレストランも10軒が入店するそうです。お披露目後、あの「タイタニック」が処女航海で出港した英国サウサンプトンに4月29日に入港し、その後5月3日に命名式が行われるニューヨークに寄港し、拠点のマイアミへ向かうそうです。2年前に就航した「クイーン・メアリー2世号」の15万1000トンを少し上回る大きさになります。最もロイヤル・カリビアン・インターナショナルは今年2月に「フリーダム・オブ・ザ・シーズ」を上回る規模の豪華客船を既に発注しており、2009年に完成予定だそうです。いよいよ第二次大型客船ブームの本格的幕開けとなるようです。

ヴェネツッア共和国が12世紀に制定した「海との結婚式」は勿論今でも続いています。817回目を迎える「ハンブルクの開港祭」自由ハンザ都市ハンブルクの姉妹港の「横浜港」の開港祭は6月です。


■引用  「海の都の物語」塩野七生著
      「大帆船時代」杉浦昭典著

 

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